さて、CFOの仕事とは、各種のイマジネーションを必要とする実にクリエイティブなものである。とりわけベンチャー企業においては、CFOがどんな仕事をすればよいのかという質問がもっとも重大かつ根源的な質問である。CFOをやったことが無い人にとっては、CFOが一体何の仕事をしているかがそもそもわかっていない。そして、現在の我が国では、CFOをやったことがない人がほとんどであり、CFO経験者は恐ろしく少ない。そして、絶対的少数者であるCFO経験者をめぐって、ちょっとした人材争奪合戦が繰り広げられている。

 ベンチャー企業のCFOにクリエイティビティが要求されるということをイメージするには、松下幸之助が終戦後、焼け野原の中から松下電器を再スタートさせた寓話を思い浮かべるのがいいかもしれない。米軍の空襲で工場が焼かれ、また、財閥解体で事実上一文無しになった幸之助が、焼けただれた工場を前に、何人かの幹部と今後について相談をしていた。そして、とりあえず食いつなぐための仕事を始めようという結論になり、各人が早速それぞれの部署についた。幸之助が何を作るかを考え、それに必要な材料をメモし、そのメモを当時の財務担当役員に渡した。「君、誠にすまんがこのメモに書いてある材料を買ってきてくれんか」幸之助の依頼に対し、財務担当役員は答えた。「買ってこいとおっしゃいますが、それを買うカネはどこにあるのですか?」その返事を受けた幸之助は、まじまじと財務担当役員の顔を見つめながら答えた。「カネがどこにあるかって?そのカネを何とかするのがキミの仕事じゃないか」しばしあっけにとられていた財務担当役員であったが、翌日から東奔西走し、どのような手段を講じたのか、最終的には必要な材料を買い揃えてきたという。

 松下幸之助の寓話は、CFO、特にベンチャー企業におけるCFOの仕事の本質を端的に物語っている。経営資源の乏しいベンチャー企業は、ないないづくしの状態から事業を開始しなければならない。そして、事業に必要な資源をあらゆる手段を駆使して調達し、目的実現に向けて投入しなければならない。

 このように、極めて創造的な仕事であるCFOであるが、繰り返すが、これを全うできる人材が極めて不足している。なぜCFO人材が不足しているのか。この問いに答えることは非常に難しい。この問いは、「なぜ我が国においてはベンチャー企業が欧米並みに誕生しないのか?なぜ我が国の近年の事業者開廃業率は、廃業が常に開業を上回っているのか?」という根源的な問いと、本質的に殆ど同じであると思われるからだ。

(続く)

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Column "Hitorigoto"

Vol.16「不足するCFOという名のプロフェッショナル Part2」